この間読んだ志坂圭さんの『天生の狐』、大変面白かったです。
主人公の紺は、山奥に隠居する老忍に育てられた田舎娘。
帯では忍娘って紹介されていますが、本格的な忍びではないですね。
素性的にも元は武士の娘で、どちらにもなりきれない描写が多い。
江戸中期の飛騨の一揆(大原騒動)を背景にしていて、
関係した実在の人物も出てくる。
そういった大きな出来事に関与しているうちに、
紺が成長していく青春もの半生記という雰囲気。
復讐の話も、そこまで比重が重くない。格上の相手に勝つために
剣を学ぼうと道場編が始まったりして、じっくり描かれてる。
とにかく紺の性格が面白い。すれっからしだけど根はいい子だったりして。
誰に対してもだいたい皮肉を言ってるけど、妙に可愛げがあるのよね。
忍びの技を仕込まれてるのでチンピラ程度には負けないけど、
武士や浪人の斬り合いにはびびったりする小娘らしい匙加減とか。
最後に忍びとしての任務が下りますが、それが話のいい締めになる。
忍者のお話を色々読んでいると、諜報活動のために国に入り
町民として暮らして、数十年たってもう忘れた頃に密命が下る……
というのをよく見ますが、実際にそういうのあったのかしら。
2020年11月26日
『天生の狐』
posted by ひづめ at 14:43| Comment(0)
| 書籍/映画
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